重なり合う、ふたつの傷
「俺、心臓が悪くてさ、小学生の頃に手術したんだ。アメリカで」
「えっ……」
お父さんの仕事の関係でアメリカへ……。そうじゃなかったんだ。
「怖いだろ、この傷跡。人造人間みたいだよな」
「そんな事……」
「手術を終えて日本に帰ってきて、プールの授業があってさ。同級生のいかにも権力ある目立ちたがりの男子に人造人間みたいだ、って言われてさ、それから毎日、人造人間、人造人間て」
「ひどい」
「そんなの大してひどくなんてないよ。中学の頃なんて、初めてつき合ったコとしようとしてシャツ脱いだ瞬間に怖い、って逃げられた」
「怖くないよ」
天野くんの傷跡に触れようとした私の手を天野くんが振り払った。
だから、私も天野くんに背を向け、フリルのついたパジャマの上着を脱ぎ、振り返った。
「梨織、その傷」
「一緒でしょ。蒼太くんだけじゃないよ」
天野くんが私を抱き締めた。
その瞬間、重なったんだ。
私の胸にある傷と天野くんの胸にある傷が。
ふたつの傷が重なった。