重なり合う、ふたつの傷


それはベッドの上でも重なり合っていた。

初めてのそれは痛くて、私の中のなにかが突かれた。

きっと心の中にも膜があったのだ。

その膜が天野くんによって破られた。

私はその破られた膜で天野くんの体を包んであげた。


さなぎだった私の体が蝶へと変わった。


天野くんは全てを終えた後、話を聞いてくれた。


私は天野くんの腕の中で子供の頃の事を話した。天野くんに守られながら、まるで子供の頃に戻ったみたいに泣きながら。


あの時は泣けなかったから、その分が一気に溢れ出した。


「よく頑張ったな」


天野くんが私の体をギュッと抱き締めた。


「蒼太くんは、心臓は?」


「もう平気だよ」


「そっか、よかった」


私も天野くんの体にしがみつくようにして胎児みたいに丸くなった。


今まで暗くて長いトンネルの中で充満していた不安という霧が消え去った。


「ごめんね。あの日、陸橋で死のうとなんかして」


「生きたくても生きられない人がいるんだから、なんて言わないよ。でもまだ頑張れるなら頑張ってほしいと思う。せっかく生まれてきたんだからさ」


「うん」


そう、私たちはせっかく生まれてきたのに自分の利益だけを優先して、その結果、異常気象を招いたり、失わずにすんだ人を失ってしまったりしているのかもしれない。



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