不器用な初恋~俺は君のことが好きだ~
「陽菜ちゃん、よかったな」
悠がかける声も素通りして俺の目は先輩だけを追いかけていた。
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それからもプログラムは順調に進み
いよいよ先輩の番
今日の先輩は淡い紫のワンピース
俺は制服かジーンズ以外見たことがないから、ワンピース姿の先輩を発表会の最初に見た時からドキドキしている。
いつもと感じが違い『大人の女性』って雰囲気で。
俺とは違うところにいるような遠い人に思えて。
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先輩がピアノの鍵盤に指を。
演奏が始まった。
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この曲は確か…『月の光』
流れるような先輩のピアノに知らず知らず引き込まれて…
そういや俺が先輩に『好きだ』って言った時、月が輝いていたよな。
あれからそんなに経ってないのに遥か昔のような気がする。