不器用な初恋~俺は君のことが好きだ~
「自殺って自分を殺しちゃうことだよ」
「……」
「殺人犯になるんだよ」
「……」
えっと…
そんな考え方は…
「フフフ…『殺人犯』は冗談だとしても」
先輩が真面目な顔をして
「そんな強さはない」
「……」
俺が怪訝な顔をしているからか
「私には親も友達も…その時は恋人もいた。それを全て捨てて死ぬなんて出来ない。親も友達も…彼も『何で救えなかったのか』って悲しむ、苦しむ。 一生の傷を与えてしまう。もしかしたら私の親はショックで寝込むかもしれない。お母さんはピアノが弾けなくなるかもしれない。お父さんは今までのように仕事が出来なくなるかもしれない。千恵も後悔に苛まれるかもしれない。私をあんなに慕ってくれてる陽菜ちゃんを傷つけるかもしれない。彼にだって…そんなことが頭の中を駆け巡るんだよね。ま、結局は死ぬのが嫌だ、恐いってだけだけど」
「……」
「死にたくはないし…やっぱり自分が可愛いんだよ」
「そ、それが当たり前だと思います。 確かに俺も野球が出来なくなったら… ショックで死にたいって思うかも知れないけど絶対に死は選びません。周りを…俺を大事に思ってる人間を悲しませて苦しませることは出来ない。死んでいく方は勝手だけど…親や陽菜に一生の重荷を背負わすことなんて俺には怖くて出来ない。い や…やっぱり死ぬのは恐い。それが当たり前です」
「うん。ありがとう」
一口アイスティーを飲み
「時間が癒してくれた。千恵達のお陰で…彼も」
ズキッ!
また胸が痛い。
俺…どんだけ嫉妬してるんだ。