不器用な初恋~俺は君のことが好きだ~
「やせ我慢」
「やせ我慢?」
「うん。同情されたくなかったから。 テニスが出来ないって言われてから彼は私の前でテニスの話しをしなくなった。不自然なくらいに。気を遣ってんのがありあり分かってた。その気持ちはありがたいけど…返って『お前はテニスがもう出来ないんだ、可哀想に』って言われてる気がした。完全に私のひがみなんだけど」
「そ、そんなこと」
先輩がアイスティーを一口飲んで
「だから…もう見ても何ともないよ。普通にしてよって彼に思ってもらえるように試合を見に行った。千恵と一緒に」
「……」
「千恵も心配性だから」
「いい友達ですね」
「うん、大事な友達。フフフ…」
「ん?」
「あの時、千恵がついて来てくれてよかった」
「えっ?」
「私達が行った時には試合がもう始まっていて、だから上の方で見てたの。彼には内緒で。ギリギリまでどうしようか考えてたし」
「……」
「行くって決めてたんだけど…いざとなると怖くなっちゃって」
「怖い?」
「うん。またテニスが出来ない気持ちが整理した気持ちが溢れ出さないかとか取り乱ししないかとかが怖かった」
そ、そうだよな。
そんな簡単に割りきれるほど単純な思いじゃないよな。
「でも…千恵に背中を押されて見に行ったの」
「……」
「試合は互角の勝負で…見ているこっちも手に汗を握るって言うのかな、自分がテニス出来ないんだとか忘れて試合にのめり込んでいた」
「……」
「フルセットの末、かろうじて彼が勝ったの」
「……」