不器用な初恋~俺は君のことが好きだ~



「純粋に面白かった。あ~やっぱり私はテニスが好きなんだなって実感出来て見に来てよかったと思った」

「……」

「それで…やっぱり『おめでとう』を言おうって思って千恵と控え室に行ったの」

「……」

きっとあの男は喜んだんだろうな。

「あの時は…行かなきゃよかったって」

「えっ?」

「今は行ってよかったと思ってるけど」

「……」

いったいどういうことだ?

何があったんだ先輩に…

「控え室から聞こえてきたの」

「なにがですか?」

「『水島は応援に来ないのか』って誰かが彼に聞いていて…それでノックする機会を逃して…その場で聞くことになってしまった 」

「……」

「『見に来なくていいって言った。見に来て俺が活躍してるのを見て嫉妬されたら堪んないぜ。それでなくても最近のアイツ何かひがんでるみたいだしな』って」

「えっ?…彼なんでしょう?先輩の? 何でそんなことが言えるんですか?」

何を考えてそんな酷いことを言えるんだ?

「他の部員も『おい仮にも彼女だろ? そんなこと言えるな』って呆れてたようだった。でも彼は『彼女だって?水島がテニスの女王だから俺の彼女に相応しいって思っただけだよ。テニスの出来ないアイツには俺には相応しくないさ。元々お高く止まって焦らして中々キスさえさせないんだぜ。まぁ、怪我をして直ぐにふるのは可哀想だからな。徐々にフェードアウト』」

な、何なんだよ、それ。

先輩の気持ちなんか何にも考えてないじゃないか。

無性に腹が立ってきた。


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