不器用な初恋~俺は君のことが好きだ~
「じゃあ涼、入ってらっしゃい」
「あ、あぁ」
――
―
風呂場から出ると
「わっ!」
「キャッ」
洗面所から出て来た先輩とぶつかった。
「ごめんね。大丈夫?」
「はい。先輩こそ大丈夫ですか?」
「うん。…だけど涼君、華奢に見えるけどやっぱり野球部ね。ガ ッチリしてる」
「えっ?」
「ね、腕に触ってもいい?」
「へっ?」
「お願い」
手を合わせてる。
「あ、はい」
パッと顔を輝かせて
「ありがとう」
俺の腕を触る。
先輩の頭が俺の目の前にある。
甘い香りがする。
お袋や陽菜と同じシャンプーのはずなのに、何故か違う。
「やっぱり いい筋肉してるねぇ」
ハッ!
「いいなぁ、この筋肉。私なんかもう落ちちゃったもんね」
あっ!
「先輩、ごめんなさい」
「えっ?何が」
先輩がキョトンとした顔で俺を見てる。
「お、俺…先輩がテニス」
「あぁ、いいのよ。知らなかっただけのことなんだし」
「でも」
俺の唇に人差し指を当てて
「もういいから。もうすぐ1年になるのよ。諦めもついてるわ」
「……」
「変に気を遣われる方が嫌だからね。これは先輩命令」
軽くウインクして
「じゃあ おやすみなさい」
階段を上がって行った。
先輩に触れられた唇が熱い。
触られた腕も熱を持っているみたいだ。
ホントに俺…
どうしちまったんだろう?