不器用な初恋~俺は君のことが好きだ~



お袋と陽菜はタクシーで先に帰り俺は自転車で。

「涼、晩御飯の支度出来てないからお寿司を注文したの。陽菜が好きだし」

「ん、それでいい。ところで陽菜は?」

「着替えてるわ」

「ん。俺も着替えてくる」

「えぇ」

2階に上がり

「……」

ん?

陽菜の部屋の前を通ると何か聞こえる。

「陽菜、入るぞ」

返事を待たずドアを開け

「陽菜…」

制服のままの陽菜がベッドに腰掛け啜り泣いている。

「どうした?痛いか?」

殴られた腹か顔が疼くのか?

「……」

「陽菜」

「…い、今…か、鏡見たら…な、殴られた時のこと思い出して… こ、怖い。怖いよ、お兄ちゃん。ウワアァァァ~」

俺にしがみつき本格的に泣き出した。

フラッシュバックか。

「大丈夫だ。もうアイツはいない。誰も陽菜を傷つける奴なんかいないから。それに陽菜にはお兄ちゃんがついてる。あの親父もいる。ちゃんと守ってやるから。もう忘れろ。先輩と約束したろ 、忘れるって。な。大丈夫だから」

「お、お、お兄ちゃ~ん…ウワアァァァ~」

「ん、泣きたいだけ泣け」

先輩と同じだ。

事情聴取や病院での検査やなんやかやで張り詰めていた。

それが家に帰り安堵した時に鏡で腫れ上がった顔を見て一気に一連のことが蘇ったんだろう。

今は泣いた方がいい。

全て吐き出した方が…


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