不器用な初恋~俺は君のことが好きだ~
ガチャガチャ
ん?
鍵を開ける音がして
「おかえり」
親父が帰って来た。
「ん。志織と陽菜は?」
「陽菜の部屋。鏡で自分の顔を見て殴られた時のことを思い出して…」
考えれば考えるほど腹が立つ。
「そうか。ま、仕方ないな。陽菜にしたら想像を絶するようなことだから」
「あぁ。で」
話しを聞こうとすると
「恭介さん、おかえりなさい」
「パパ、おかえりなさい」
お袋と陽菜が降りて来た。
「陽菜、ほらお土産だ。明日、悠が持って来るプリンより美味いぞ」
紙袋を陽菜に渡して
「5つあるから陽菜は2個食っていい」
「フフフ…陽菜よかったわね」
「うん。パパ今日はお寿司だって。早く着替えて来て。あ、お兄ちゃんもまだ着替えてないんだ。2人とも早くね」
「あぁ」
「へいへい」
泣くだけ泣いたのかちょっとはすっきりしたのかも。
それならいいんだが。
親父と2階に上がり
「涼」
「ん?」
「もう今日のことは陽菜の前では話すな。この後のことは陽菜が寝てからだ。いいな」
「ん、分かってる」
これ以上は陽菜の耳には入れたくない。
先輩と指切り約束したようにアイツのことは忘れてほしい。
記憶から消し去ってほしい。
陽菜だけでなく先輩も。