不器用な初恋~俺は君のことが好きだ~
「藤倉君、かっこよかったよ」
「ほんと先輩素敵でした」
俺の周りに女の子が取り囲んでいるがそんなのどうでもいい。
ちょっとどいてくれ。
…ん?
あれは…
先輩…
「お兄ちゃん、お兄ちゃんったら」
陽菜が周りの女の子達を掻き分けて俺の手を引っ張る。
「あ、ん?」
「帰れるの?」
「あ、あぁ」
「じゃあお昼御飯食べに行こう。お腹空いちゃった。ね~愛ちゃん」
「うん」
「昼?」
試合が10時からだったから…
今はもう1時か。
「パパからお昼代貰ったの。ママとデートするからって」
親父…お袋と2人きりでデートだから気前がいいな。
「ん、なら行くか」
「俺も行く」
悠?
「うん、ママが悠ちゃんも一緒にって」
「さすが志織さん」
悠もお袋のことを『志織さん』と呼ぶ。
『おばさんって感じじゃないもんな』って言うのが理由らしい。
確かに俺の友達はお袋のことを誰も 『おばさん』とは呼ばないな 。
みんな『志織さん』だ。
お袋のことを『おばさん』って呼んでたのはみんな小学生くらいまでだ。
お袋は「恥ずかしいからおばさんって呼んでよ」って言ってるが。