不器用な初恋~俺は君のことが好きだ~
「ある日ね」
あっ!
「ん」
「仕事の最中に『お茶飲みに行くぞ』って連れ出されてホテルのティーラウンジでお茶とケーキ食べてる時にね、いきなり『お前 、俺と結婚しろ』って」
へっ?
「か、母さん」
「うん?」
「いきなりプロポーズって…付き合ってたのか?」
「ううん。全く」
「全く?」
「うん。どちらかと言うと避けてたし」
「なのにいきなりプロポーズ?」
「うん」
「か、母さん、OKしたの?」
「まさか!母さんだってそこまで馬鹿じゃないわよ」
でも結婚したよな。
俺のそんな視線に気づいたのか
「初めは当然断ったわよ」
「じゃあ何で?親父諦めなかった?」
「ハハハ…正解。断ったら返って闘志を燃やしたみたいで」
「……」
「絶対結婚するって『お前は俺に惚れる』って」
どっからその自信は来るんだよ。
――
―
『俺を好きにさせてみせるから』
俺も同じことを先輩に言ったよな。
「何で結婚する気になったの?無理矢理脅されたとか」
「まさか。母さん、そんなに弱くないわよ」
「……」
「恭介さんの事を知れば知るほど…う ~ん、ぶっきらぼうで口悪いけど優しいし」
「優しい」
「そう、母さんを大事にしてくれるし、まぁ、たまにピントずれてるけどね」
「ハハハ…確かに」
「いつの間にか惹かれてたんだと思う」
「いつの間にか?何かがあってとかじゃなくて?」
「う~ん、そうね。本当にある日突然ね、私は恭介さんが好きなんだって気づいたの。何かがあってとかじゃなく徐々にかしらね 」
「……」
「ま、毎日毎日『お前は俺と結婚するんだ』なんて言われ続けると一種の催眠術みたいなもんかしらね」
催眠術って…