不器用な初恋~俺は君のことが好きだ~
「お兄ちゃん、こちら水島凛さん。ほら、いつも話してるでしょ?ピアノ の先生の娘さん」
「……」
「水島凛です」
「……」
「お兄ちゃん!」
ハッ!
水島凛と名乗ったその人は、ちょっと悪戯っ子みたいな笑顔を浮かべて
「昨日はありがとうございました」
「あら凛ちゃん、昨日、涼に会ったの」
お袋がお茶を渡し、俺の横に座る。
「学校で?」
へっ、学校って?
「いえ、昨日公園で子ども達とサッカーしていて、ボールが飛び出したんです。それを偶々通りがかった陽菜ちゃんのお兄さんがキャッチして下さって」
そうだ。
昨日、学校の帰り道にある公園からサッカーボールが飛んできた。
俺がボールをキャッチして公園から幼稚園くらいの子どもと女の人が走って来て
「ありがとうございます」
丁寧に頭を下げてお礼を。
幼稚園くらいの子もニコッと笑い
「ありがとう」
俺は彼にボールを渡して
「気を付けろよ」
「うん」
大事そうにボールを抱えて公園に戻って行った。
女の人が再び
「ありがとう」
「あ、いえ」
顔を向けたら、その人がニコッと笑って
「じゃあ」
踵を返して公園に戻って行った。
ジーンズにTシャツ姿でキャップを被って化粧気も無くて…
俺と同じくらいか下かなっと。
でも礼儀正しい子だ。
暫く公園でちびっこ達とサッカーをしてるのを見ていた。
するとさっきの子どもが手を振って…
それを見た他のちびっこも手を振ってくれて…彼女は再びお辞儀を。
俺もお辞儀を返してその場を後にした。