刹那

運命―サダメ―





翔と会ってから数日たった。

最近、翔の調子がいい。

顔色もいいし、よく笑うようになった。

私は、翔の退院する日を心待ちにしていた。

「あれ?」

・・・・・・あれは、翔のお母さん?

近づくと、翔のお母さん―文子さん―は私に気づいたのか、手を振ってくれた。

走っていくと、文子さんは「久しぶりねぇ」って笑った。

何時も思うけど、文子さんの笑みは"大人の女性"って感じがする。

落ち着いた、それでいてとても華やかな笑み。

こういうのを"大和撫子"って言うんだよねって言ったら、翔には「零羽には無理だな」って笑われたことがあるがそれは置いといて・・・・・・。

まあ、ようするに優しくて綺麗で憧れの女性だ。

「どうしたの?」

文子さんに言われ、私は多少どもりながら「何でもありませんよ?」と笑った。

そして、一番聞きたかったことを思い出して言った。

「あの、翔、何時退院できるんですか?」

そう言うと、文子さんは酷く傷ついたような顔をして、言葉を詰まらせた。

「あの・・・・・・?」

ボーっとしていた文子さんに声をかけると、文子さんは言った。

・・・・・・心なしか、顔が青くなったような気がする。

もしかして翔、調子悪いのかなあ?

そう思ってたら、文子さんは、言った。

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