壱。ID
傘 。
ねえ、聴いて。
他のやつの音は聴かなくてもいいから。
『悲しみの雨が降り止まないなら 僕が傘をさすよ 君の隣で』
君のために。君を守る歌を。
過保護な僕は、不器用で無能だから。
できるのは歌うことくらい。
言葉が下手だから歌うの。
いつか君に捨てられたら、
その時は、君の笑顔思い出して歌うね。
ゴミ箱みたいな毎日をひっくり返してカラフルにしてくれたのは
紛れもなく君だから。
屈託のない笑顔。
ぐしゃぐしゃの泣き顔。
怒ったときの東北弁。
全部僕に教えてくれた「君」だから。
忘れたくないことは全部、ノートにでも書いておこう。
僕が君を好きなこと。
君が僕を嫌ったこと。
大切な大切な思い出になるんだろう。
そんなことを思いながら唄ったら
[重い。]って君が言った気がした。
ごめんね。僕にはこれしかできないの。
唯一の売り。歌うこと。
君を守る歌。とかいって
唯の自己満足かもね。
それでも、好きだよ。君のこと。
もう少しだけ頑張るから。
せめて僕を忘れないで。