箱庭

「おはようございます。」



誰もいないはずの研究室に挨拶をした



「上野さん、いるんでしょ?出て来て下さい!」



そう言うと実験台の下からひょこっと顔が出てきた



「雨君、いつから気付いてたのかい?」



「研究室に入った時からですよ。」



ちぇっ と舌打ちを一つして、上野さんは、もぞもぞと台の下から出てくる



「なんだい? 朝早くからさ。」



「あ、あの。アセビの事なんですけど………」



「アセビちゃんかい?」



「そうです。あの、何で昨日連れて行ったんですか?……それと今日アセビ、なにかあるんですか?」



気のせいか上野さんの動きが一瞬止まって見えた



しばらく上野さんは何も言わずに難しい顔をした



「今は知らなくていいことなんだよ。」



「上野さん教えてください。
ぼく、逃げません。」

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