光と闇の境界線(短くて、短いお話)
何かぶつかった音なのかも。
疑問ではいたが、そう思い
窓をそのままにして、
再びピアノと向き合った。
その時、またもカタン…という
音が、私に届いた。
再び窓の方を見てみるとそこには
一匹の黒猫が、座っていた。
黒猫は、尻尾を振りながら
コバルトブルーの妖艶なる瞳を
私に向けてくる。
その姿は、昼間会ったあの黒猫だった。
「…キミは、どこから来て、
どこに向かうの?」
「ニャー」
一言。
黒猫は、その一言だけを言うと
ふわり、と窓から出ていった。
…一体あの黒猫は、どれだけの
路を知っていて
そして、今度はどこへ
向かうのだろう…。
と、何かを思いつき、
近くにあったペンをとった。
そして、楽譜の脇に小さく
その言葉を書き留めた。
…また会えることを願って。
(さあ、どこへ行こう)