私、恋をしている
飲んで食べて、いい気分になってきた。女子の食欲とおしゃべりは止まらない。


「そりゃあ、うちの旦那はイケメンやけどぉ…」


いい気分になると、姉さんが決まって言うセリフが今日も飛び出した。飲料類を自動販売機や小売店に届けるルートセールスマンが大半を占めるオフィス内。数少ない女子は、飲むとついついルートセールスマンたちの話をしてしまう。


姉さんの旦那様も、ルートセールスマン。社内でも1、2を争うイケメン。私みたいな、明るさで自分の地味さをカバーしている女子からすれば、まさに『高嶺の花』だ。


「河内さん、めっちゃかっこいいけど…かっこよすぎてムリですわ」


「まぁね。殿堂入りやな」


よくまぁ自分の旦那を殿堂入りやなんて…と思いながら、それほど好きになれる相手がいる姉さんを、羨ましく思った。


「殿堂入りは置いといて…やっぱ、福岡さんでしょう⁉︎」


福岡誠人、25歳。そこそこのイケメンやのに、全く自覚していない天然。慰安旅行の時、旅館の浴衣を裏返しに着ていたり(シラフやったのに…)スーツにクリーニングのタグを付けたまま出勤したり…。真面目で、シャイ。女性と接する時も、いちいち緊張しているような人だ。


長身でがっしりとした身体。髪は、ナチュラルな茶髪に緩いパーマ。外見と中身のギャップにやられてる、私。





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