『彼がいるから行けません…』
圭ちゃんは昨今持て囃されるS系男子とは全然違っていて…
私をいつも甘やかし、アメばかりくれるスイートな人
(代わりに朋はムチばかりくれるけど…)
少し下がり気味な優しい目が印象的な顔立ちの圭ちゃん
ドラマ「春のワルツ」で主役をしていた役者さんに良く似ている
私は圭ちゃんがたとえどんな容姿だったとしても大好きだと自信を持って言える
だけど…
「咲のことは妹みたいにしか思えない」
この言葉を言われて圭ちゃんと気まずくなるよりは、ずっと今のポジションをキープしたい。
そんな思いでいるから朋に何度言われても、これから先も告白するつもりはない。
それが圭ちゃんが結婚するまでの期間限定だったとしてもね。
朋と飲むと弱音も吐けるけど、グサリと突き刺さる本音が痛くてアルコールの酔いも醒めそうだ。
居酒屋からの帰り道
まだ通りには人の往来があって安心して駅から自宅までの10分の距離をトボトボと歩いていたら
いきなり肩を掴まれ驚き過ぎて声も出せないまま早鐘のようにドクドク波打つ心臓
恐る恐る振り返った私が目にしたのは笑いを噛み殺した圭ちゃんの姿だった。
安堵にブワッと滲んでくる私の涙に、圭ちゃんは慌てて
「ごっ…ごめん悪かった…この通りだから許して~」両手を合わせてぺこぺこ頭を下げて謝ってくれるけど…
一度溢れた涙は簡単に止まってくれなくて私は往来のド真ん中で暫く泣き続けた…