俺の魂を狂わす女
するとドアが横にスライドした。

私がサッと目を向けると彼は歩いてきた。

「お怪我は?大丈夫なんですか?」

相手は私を見るなりびっくりして

口を半開きのまま突っ立っていた。

「日高さん?」

「見ての通り何ともないよ。」

「本当ですか?」

「それで、なぜここに?」

「なぜって、自分でもわかりません。」

「あっはっは。」

彼は左肩をかばうように顔をしかめた。

「痛むんですか?」

「大丈夫。取り合えず移動だ。外科の前で待てと言われた。」

私は無言でうなづいた。

外科のブースにいくつか並んだ長椅子の一つに座った。

「沢木に会った?」

「はい、駐車場で事故のことを耳にして。」

「俺は日高衛。君は?」

「久保玲香です。」

「玲香。君らしい名だ。」

「ここが済みましたらお送りしますわ。」

「ありがとう。事務所へ戻りたい。」

「ご自宅で休まれなくてもよろしいんですか?」

「沢木に顔を見せないと。それに2階で仮眠できる。」

「わかりました。」

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