俺の魂を狂わす女
「ところで、仕事は?」

「今日は午後休でしたので。」

「偶然とはいえ、せっかくの休みを台無しにして済まない。悪かった。」

「いえ、予定もありませんでしたし。」

「日高さま~!」

カウンターで名前を呼ばれた。

「行ってくる。」

「ええ。」

私は立ち上がった彼を見上げた。

本当に怪我はないようだ。

包帯どころか絆創膏一つない。

バイクは大破だと聞いた割には軽く済んで

私は安堵を覚えた。

しばらくして彼が戻った。

「お待たせ。」

彼は私の問うような顔を見て答えた。

「大丈夫。打ち身だけだった。」

お互い目だけで笑った。

「会計を済ませる。」

「ええ。」

病院のエントランスへ移動した。

私は急速にのどが渇いた。

自販機で水を買ってあおるようにのどに流し込んだ。

そこへ会計を済ませた彼が戻った。

「おいおい、君こそ大丈夫か?」

ふぅと息を吐いて私は恨みがましく彼を見上げた。

「帰ろう。」

「ええ。」

< 11 / 43 >

この作品をシェア

pagetop