俺の魂を狂わす女
俺は会計を済ませ長椅子に座った彼女に目を向けた。

ボトルの水をらっぱ飲みしていた。

白いのどがゴクゴクと動いて

なんともエロい有り様に

俺はこの女に魂を持っていかれる自分を予測できた。

彼女の運転で事務所へ送ってもらった。

自分で思うより神経に応え

さすがに疲労感があった。

助手席に甘んじて目を閉じた。

打撲した左肩が重苦しい。

腕を組むと筋肉が痛む。

俺は利き手が左だ。

しばらくは不自由になる。

右も使えるが100%ではない。

愛車のバイクもない。

事務所への往復手段を絶たれ

当分仕事は今まで通り自宅でやり

沢木に負担をかけることになると思った。

「日高さん。」

呼ばれてハッとした。

「着きましたわ。」

いつの間にか寝入ってしまった俺は

彼女の声でゆっくり目を開けた。

重いまぶたを無理矢理こじ開けて隣を見た。

「ありがとう。」

俺の気だるい声に彼女の表情が曇ったようだ。

はっきりとはわからない。

「手を貸すわ。」

すばやく車を降りた彼女は助手席のドアを開けた。

「立てます?」

「ん、ああ。」

なぜか足も重く

思うように身体が動かない。

事故後の疲労が今になってドッと襲ってきた。

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