俺の魂を狂わす女
「坂下さん、聞いてもいいかしら?」

「対男のことなら何でも聞いていいよ。」

「おふざけがお好きね。」

「真面目に聞こうじゃないか。」

「思い出したくないかもしれないことを聞いて申し訳ないんですけど。」

「僕なら大丈夫だよ。」

「社員旅行の事故の時、やはりその衝撃は強いと思うの。」

「そうだな、個人差はあるよ。」

「事故の後は心理的にどんな風になるのかしら?」

「身体的な打撃も精神的なものも時間を経て少しずつ癒えてくるよ。」

「どんな気持ちが一番強いのかしら?」

「特にナーバスになる。」

「そう。」

「人の支えや温かい言葉が欲しくなる。」

「他にはあります?」

「その半面外を遮断して一人でいたいと思う時もあるよ。」

「それはどうしてかしら?」

「自分の気持ちを整理したいんだ。」

「そう。」

「彼氏が事故ったのか?」

「いえ。」

彼女は思案顔で口をつぐんだ。

僕はそっと廊下に出た。

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