俺の魂を狂わす女
彼はバイクにまたがったまま苦笑した。

「ありがとう。もしかして気がある?」

さらに私を困惑させる質問をサラリと言われ

私の口がまた勝手に動き出した。

「正直に申しますと、はい、ですわ。」

お互いにしばらく見つめ合った。

「俺もだ。あとでメールするからアドレスを交換しよう。」

スマホを交えた。

「聞いてもいいですか?」

私はとっさに尋ねた。

「今?メールじゃダメか?」

「はい。」

「何?」

「日高さんはおいくつでいらっしゃいますか?」

「俺は33だけど。」

「わかりました。ありがとうございます。」

「じゃ、今日も頑張ろう。」

彼はうなずく私をその場に残して

バイクを発進させた。

隣のビルの前に駐車し

頭からヘルメットを取るまで

私は彼を目で追った。

彼は私に軽く手を振ってドアの向こうへ消えた。

私はスマホを握る自分の手が少し震えていることに気づき

両手を胸に押し当てた。

33歳。

年下ではなかった。

良かった。

28歳の私としては恋愛対象は年上でなければという

人に言わせたらたぶん偏ったプライド

を持っていたからだ。

やはり年下だとそれだけで気が引けた。

ラボへ向かう私の足取りは軽やかだった。

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