俺の魂を狂わす女
彼だわ。

帰ってきた。

やっと会える。

私は運転席のウィンドウから外を見た。

バイクは確実にこちらへ向かって来た。

彼は私の車に気づいているはずだ。

彼がバイクを空いたスペースに止めるのがスローモーションのように

ゆっくりとした感覚で私の目に映った。

メットを脱いでバイクを降りた彼は

プジョーの窓ガラスを軽く叩いた。

私はドアを開けて

冷えた体で彼に抱きついた。

「玲香。ちょ、待っ。」

彼は冷たくなった手で私の背中をさすった。

「メールくらいしろよ。しょうがないな。」

私が抱きついたまま無言でいると

彼は私を抱えるようにエントランスへ導いた。

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