じゃあなんでキスしたんですか?




 目を上げると、鼻先が触れそうな距離に整った顔があった。


 切れ長の目に見つめられ、声も出ない。

 節の目立つ指が、わたしの頬をそっとなでる。


「ほんと、かわいいなおまえは」


 甘さだけ絡めた声でささやくと、彼はわたしを引き寄せた。


 一瞬、何が起きたのかわからなかった。


 合わさった唇の感触に、意識が集中する。


 いままで感じたことのない、驚くほどやわらかな触れ合いに、頭が真っ白になる。




 それはとろけるほどあたたかく、

 そして、途方もないくらい冷たい――




 
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