じゃあなんでキスしたんですか?
◇
目を上げると、鼻先が触れそうな距離に整った顔があった。
切れ長の目に見つめられ、声も出ない。
節の目立つ指が、わたしの頬をそっとなでる。
「ほんと、かわいいなおまえは」
甘さだけ絡めた声でささやくと、彼はわたしを引き寄せた。
一瞬、何が起きたのかわからなかった。
合わさった唇の感触に、意識が集中する。
いままで感じたことのない、驚くほどやわらかな触れ合いに、頭が真っ白になる。
それはとろけるほどあたたかく、
そして、途方もないくらい冷たい――
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