じゃあなんでキスしたんですか?
「マイちゃん、部屋に入ってくるときはノックして」
「えーなに急にぃ。今までそんなこと言わなかったのに」
二人掛けテーブルの定位置に腰をおろすと、目の前に皿が出される。大葉と海苔とネギがたっぷりのった、マイ特製、ホタルイカの沖漬けパスタだ。
窓の外に目を向ければ、太陽が灼熱の日差しを注いでいる。
レースのカーテンだと太陽の熱を完全には遮断できないのかもしれない。エアコンをきかせているのに、部屋のなかは少しむっとしている。
日曜日の昼下がり、姉妹でダイニングテーブルを囲う穏やかな時間だった。
「それにしても今朝は驚いたなぁ。まさかミヤちゃんと同じ電車になるなんて」
ホタルイカがのどに詰まって、わたしはひどく咽た。
「ちょっと大丈夫?」
渡された麦茶を飲みほし、息をつく。
「で、昨日はどこに泊まったのミヤちゃん」
にっこり笑顔で問いかけられ口をぱくぱくさせていると、マイは「なーんて」と唇をすぼめる。
「どうせ打ち上げ飲みでオールでしょ?」
「……そういうマイちゃんだって、浴衣で出かけたのに、どうして洋服で帰ってきたのかな?」
話題を逸らすつもりで尋ねると、妹はからからと笑った。