じゃあなんでキスしたんですか?
4/Trust me, please.
4◆
受話器の向こうから聞こえる声に応答していると、相手に見えるわけでもないのに、ついうなずいたり、首を振ったりしてしまう。
「ええ、ではサンプルを送っていただけますか。はい、よろしくお願いします」
内線電話を終えて、わたしは各部署の編集部員から送られてきた原稿を開いた。文章に間違いがないかを確認し、社内報の元となる紙面に配置していく。
仕事に終わりはない。
社内報を無事に発行しても、その次の日には次号のための編集会議を開かなければならないし、合間に広報課の用事がちょくちょく入ってくる。
おまけに広報課でいちばん下っ端のわたしは、窓口として電話応対や連絡調整を任されていた。
息をつく暇もないくらいだ。
でもそれが、いまはとてもありがたい。
「小野田、ちょっと」