じゃあなんでキスしたんですか?
すみません、と頭だけを下げて、画面に映し出された過去の社内報を眺めた。
誰が決めたのかは知らないけれど、株式会社ブルースマートの社内報は“ブルーバード”と呼ばれているらしい。
巻頭に雑誌のタイトルのように大きく四葉のクローバーをくわえた青い鳥を模したタイトルがあしらわれている。
マウスをクリックして記事を拡大したりページをめくったりして文字を追っていく。
この文章を書いたのはわたしのとなりにいる大橋先輩だ。
去年までこのデスクで社内報を制作していた彼女はいま編集室の仕事を離れ、新聞や雑誌に会社の情報を流したり、テレビ番組の取材を受けたりと対外的な仕事を担っている。
そんな大橋先輩のあとを任される形で、わたしがここへやってきたのだ。
社外の人間と打ち合わせをすることが多いせいか、大橋先輩は頭のてっぺんから足の先まで抜かりない。
ほんのり茶色のロングヘアは照明を反射してつやつやと光っているし、華やかでセンスのいいオフィスカジュアルは、見ている人間を明るい気持ちにさせてくれる。
大橋先輩を見習って、わたしもせめて、とピンヒールの靴を履いてきたのだけど、どこかの誰かさんに「似合ってない」とダメ出しをされてしまった。