じゃあなんでキスしたんですか?


「桐谷さん、なんてこと言ってくれたんですか!」

「はは、見たか? あの反応」
 
そういうと、満足そうに笑う。

「面白かっただろ?」
 
胸がつかえて、言葉が出てこなかった。

無表情な森崎さんが激変した瞬間。
 
しかも、わたしのことで、だ。

「俺ができんのはここまでだな」
 
よれたカッターシャツを手で伸ばしながら、エースはつぶやく。

「あとは自分でなんとかしろ」

「桐谷さん……」
 
乙女の夢を体現化した王子様、と見せかけた腹黒エースは、びっくりするくらいやさしい顔で笑った。

「とことんぶつかって、それでも砕けたら、俺が慰めてやるよ」
 


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