じゃあなんでキスしたんですか?
前回と同じように、眠くてもたれかかってきたのかと思った。けれど、森崎さんの腕はしっかりとわたしの肩を抱いていた。
「小野田」
ささやいた声がとても甘くて、胸がきゅっと締まる。
からだを動かして、彼に向き直る。ずっと会いたかった森崎さんが、いま、目の前にいる。
広い背中に腕を回し、かたい胸に顔をうめた。
森崎さんの匂いを、全身で感じる。
からだを離すと彼はわたしの手を取って、ふらつきながら寝室のドアを開けた。広いベッドにわたしを座らせると、力尽きたようにとなりに突っ伏す。
このまま眠られては困る。
廊下の明かりが差し込むだけの薄暗い寝室で、わたしはあわてて森崎さんの肩をつかんだ。
「起きてください」
揺さぶっても起き上がる気配はなく、やむを得ず、顔だけでも見られるように大きなからだをごろりと転がした。
とろんとした目が、不思議そうにわたしを見上げる。
「森崎さんに、聞きたいことがあるんです」
やさしい笑みを浮かべて、彼はちいさくうなずく。