じゃあなんでキスしたんですか?



仕事だから?
 
でも社内報でインタビューに答えることは、彼らの業務には当てはまらない。
 
そもそも、どうして社内報でいろんな部署の人間の話を聞く必要があるんだろう。
 

考えているうちに、ぽっと森崎課長の顔が浮かんだ。
 

――なんで桐谷じゃないといけないのか。
 

頭のなかでこんがらがっていく言葉を、テキストに起こしてまとめてみる。

キーボードのボタンたちが、わたしの指の下で瑞々しくはじけるような感覚があった。
 
どうして桐谷さんにお願いしたいのか。
 
なんのためのインタビューなのか。
 
そもそも社内報って何?
 
ちいさな疑問をどんどん辿っていくうちに、芋蔓式に大切なことが掘り起こされるような気がして、わたしは我を忘れてキーを打った。

やわらかな手ごたえに触れた気配に、気持ちが燃えて、集中力が増していった。
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