じゃあなんでキスしたんですか?
いざ確かめようと思うと、彼のふやけた微笑はなんとなく心もとない。
本当に、素直な気持ちを口にしてくれるのかな。
酔ったら適当なことを言うのが、酔っ払いというものだ。
でも、いまさらそんなところを疑っても仕方がない。
「わたしのこと、どう思ってますか」
仰向けになった森崎さんの横に、両手をついて、わたしは彼の顔を覗きこんだ。
表情のちいさな変化も見逃さないように、端正な顔を注意深く見る。
切れ長の目は、じっとわたしを見つめ返している。
目を逸らすことなく、まばたきもせず、彼はふわりと笑った。
「好きだよ」
こみ上げる衝動をこらえて、わたしはなおも尋ねる。
「それは、どういう意味の好き?」
妹みたいに、動物も友達も食べ物すら一緒くたに好きとくくってしまう人間がいるのだ。
すこし神経質になっていると自覚しながら、それでも質問をやめられなかった。
「広報の仕事とか、甘いカフェラテとか、そういうものに対してと、同じ意味の」
言い終わる前に大きな手が頬に触れた。