じゃあなんでキスしたんですか?


驚いてとっさに起こそうとしたからだを、引き留められる。
 
頬と肩に、森崎さんの手のぬくもりを感じる。

「好きだよ、ミヤコ」
 
とろけそうな声に、背中がしびれる。

「好きだ」
 
引き寄せられるまま、わたしは森崎さんと唇を合わせた。
 
懐かしいやわらかな感触に、胸を突かれる。

「森崎、さん」
 
キスが深いものになっていく。
 
かすかに漂うアルコールのにおいに、すこしの罪悪感を覚えながら、されるがまま唇を開いた。
 
いつのまにかからだを返され、背中がシーツに沈む。
 
上からわたしを覗きこむように見る森崎さんは、もう笑っていなかった。
かといって無表情でもない。
 
まるで理性を取り戻したような真剣さで、口にする。 

「ミヤコ、好きだ」
 
低く艶のある声に、からだの芯がしびれる。

「森崎さん」
 
震える手を首に回すと、そのまま押し潰されるようにして抱きしめられた。



< 211 / 265 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop