じゃあなんでキスしたんですか?
5/Love me, please.
5◆
白くつるつるした表面に黒いマジックで見出しを書く。
“ブルーバード 十一月号”
振り返ってコの字に並べられた机を見渡す。
「それでは、今月の編集会議をはじめたいと思い――」
一瞬おとずれた違和感に、言葉を切る。
いつもの部屋で、各部署に在籍する編集部員と編集長を前にして会議をはじめるところだった。
もう一度、それぞれの顔を確認し、あっけにとられる。
あきれるほど整った顔に頬杖をついて、この場にいるはずのない人間がにやにやと笑っている。
「な、なんで桐谷さんがいるんですか」
「俺んとこの編集部員が急な外出のため、代理できました」
右手をちいさく掲げ、ほかのメンバーにも説明するような口調でさらりと言う。
「そんな、桐谷さんはお忙しいんじゃないんですか?」
「今日は午前中に外出先の用事はほぼ済ませたし、いまは休憩中なんで」
「休憩気分で来られても……」
「まあまあ、いいじゃないの小野田さん。外商部のエース様なんてそうそうお目にかかれないから、貴重だわ。何かいい案を出してくれるかもしれないじゃない?」
そう言ってにこにこ笑っているのは、サポート部の編集部員だ。