じゃあなんでキスしたんですか?
「コピーさせてください!」
「は?」
森崎さんが唖然とした顔でわたしを見る。
「宝物にします」
わたしだけにささやく森崎さんの甘い声が、物理的に残っているなんて!
「編集して着ボイスに」
「やめてくれ!」
持っていたICレコーダーをひったくられた。そのままボタンを操作して音声を消去してしまう。
「ああ、もったいない」
うらめしそうにわたしを見ると、彼は深いため息をついた。
「まさか、酔った自分があそこまでするとは」
がりがりと頭をかくと、あきらめたようにうなだれた。と思ったら深く息をつき、わたしの正面で正座をする。
「責任を取らせてほしい」
「え……?」
「順番が逆になって申し訳ないが、俺と付き合ってくれないか」
まだ顔に赤みを残したまま、大きな体を折って、森崎さんは頭を下げた。
絨毯の上に座り込んだまま、わたしはテーブルのICレコーダーに目をやり、そして視線を戻した。