じゃあなんでキスしたんですか?


「まあ、万が一バレたら、そのときは……」
 
ちいさく微笑んで、森崎さんはゆっくりと顔を下ろした。
 
唇が重なる。
 
甘く、やわらかなキスをしながら、徐々に体重をかけられ、気が付くと背中が絨毯に受け止められていた。

「あ、あの……」

「俺、記憶がないから。録音じゃなくて、肉声、聞かせてくれ」
 
低いささやきに、のぼせそうになる。

「で、でも」
 
窓の外はまだ明るいし、ここはリビングだし、なによりも酔っていない森崎さんの理性的な目で見つめられると、とても気恥ずかしい。

「夜まで待っ」
 
長い人差し指が、しゃべるなと言うようにわたしの唇を塞ぐ。上から顔を覗きこまれ、顔が上気した。

「会社以外でなら、全力出していいんだろ?」
 
ひどく艶っぽい声に気を失いそうになる。

「も、森崎さん、どうかICレコーダーを」

「録音なんかするわけない」
 
そう言って笑うと、大きなからだでわたしに覆いかぶさった。
 

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