じゃあなんでキスしたんですか?
「あ、ミヤちゃん、おかえりぃ」
ほどけるように笑う彼女に、男が「誰?」と邪魔そうにこちらを見る。
「お姉ちゃんだよぉ」
「え、一人暮らしじゃねーんだ」
「うん、ミヤちゃんと一緒」
「ふうん」
妹と見比べるようにわたしを眺め、男は汚れたスニーカーに足を突っ込んだ。
耳にかかる髪を明るく染め抜き、首元にはやんちゃさ全開の皮のチョーカーを巻きつけている。
「ユウ君じゃあねー、バイバイ」
一段高いところから妹が顔を突き出し彼に唇を寄せる。傍らにいるわたしの存在を忘れたようにキスをすると、彼はゆっくりと玄関を出ていった。
「マ……マイちゃん、いまのは彼氏?」
帰宅早々出くわしてしまった光景に踊り狂う鼓動をごまかしながら尋ねると、妹は楽しそうに笑った。
「えーちがうよぉ。大学の友達ぃ」
「トモダチ!?」
キスしてたのに?
部屋の主であるわたしが遠慮してしまうくらいイチャついていたのに!?
にこにこと笑っている彼女の肩をあわててつかむ。