じゃあなんでキスしたんですか?



デート……じゃないよね?
 
なぜか心音が高くなっていく気がした。

桐谷統吾の声がはっきりと脳内でこだまする。
 

――ミヤコ。
 

お父さんを除いたら、男の人に名前を呼び捨てにされたことなんてない。
 
視界に白いプラスチックのゴミ箱が見える。

マイがさっき捨てた生々しい包装フィルムが透けて見えるような気がして、慌てて視線を外した。
 


恋愛経験もなければ、デートの経験だって皆無だ。
 

桐谷統吾の皮肉めいた微笑みが、頭の中をぐるぐる回って、せっかくのホタルイカの味をゆっくり楽しむことができなかった。




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