じゃあなんでキスしたんですか?


「森崎さん、飲み物、大丈夫ですか?」

「ああ。すごいな小野田。全然酔ってないだろ」

「ええ、わたし、結構お酒強くて」

「食べ物の好みも変わってるしな」

「よくおじさんくさいって言われます」
 
自虐っぽく言うと、森崎課長の目じりにやさしい皺が寄った。
体内に取り入れたアルコールが急激に火を吹いて、わたしはあわててうつむいた。
 
なんだろう、さっきから。
 
森崎さんが会社にいるときと違うからか、調子が狂う。

「おいー、聞いてんのかミヤコ」
 
突然右耳をつままれて、わたしは悲鳴を上げた。

「さ、触らないでって言ってるじゃないですか」
 
だいぶ酔いが回っているらしい桐谷さんから距離を取る。

彼は赤い目でうらめしそうにわたしを見つめた。酔っぱらうと普段の態度から輪をかけて横柄になるみたいだ。

「ふざけんなおまえ、もっと可愛く酔えねえのかよ」

「すいませんねぇ大酒食らいで!」

「ちっ」
 
べろんべろんの状態でさえ偉そうに舌打ちをこぼし、エースはぐでんと椅子にもたれかかった。

「ちょ、大丈夫ですか」
 
完全に脱力してしまったエースは、首まで真っ赤に染めて寝息を立てている。

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