好きになっちゃダメなのに。
そうだよね、私が上に乗っちゃったんだもん、痛くないわけないよね。
でも、でも、そんな言い方ってないと思うの。
って、偶然とはいえ受け止めてもらった人に言えるセリフじゃないから、言いたい気持ちをグッとこらえる。
「これ、どこかに持って行く途中?」
ヒョイッ、とまるで私が持っていたものと同じとは思えないほど軽々と床に転がっていた世界地図を持ちあげて、速水くんが私の方を振り返った。
「うん、6組に持って行こうとしてて」
「ふーん」
興味なさげな相槌を打って、速水くんは世界地図を持ったまま歩き出した。
「え、あの、速水くん!?」
なんで、と思いながら慌てて速水くんを駆け足で追いかける。
「あんたが持っていくより俺が持っていった方が早い。晴山さんは教室に戻っていいよ。届けとくから」
「え!?そんな迷惑かけられないです!私が持って行くので、速水くんは気にしないで自分の授業に行ってください!」
「なに、迷惑って。俺はあんたと違ってこっちの棟だし、一応あんたより力あるし、こんなの迷惑のうちに入んないんだけど。それよりフラフラ危なっかしく歩かれるほうが迷惑」
「っ」