好きになっちゃダメなのに。
♯ 3 夕暮れチョコチップ
♯3
「はあぁぁー」
無意識のうちに零れた大きなため息に、周りにいた先輩たちが不思議そうな顔で私を見た。
「明李ちゃん?何、どうしたの?さっきからため息ついて」
声をかけてくれたのは、夕衣さん。
さっきまで、カシャカシャと軽快な音を立ててボウルの中身をかき混ぜていた手が止まっている。
「……え!?あっ、ごめんなさい。私、またため息ついてました?」
「ついてたついてた。すっごいおっきいやつ。どしたの、何か心配ごと?」
今週に入って、夕衣さんと同じようなことを何度も羽依ちゃんにも言われている。
だけど、私はどうしてもため息が止められない。
というか、無意識すぎて、言われなきゃ気付かないという厄介な状況。
「……私のことじゃないんですけどね。ちょっと、友達……というか知り合いのことが心配で」
そう答えて、いつのまにか止まってしまっていた、生地を丸める作業を再開させる。
「そうなんだー。恋愛相談でもされてるの?」
私が作業を再開させたことで、夕衣さんの手元からも再びカシャカシャという音が聞こえてくる。