好きになっちゃダメなのに。

無関係とは言わないけど、なんて遠まわしな言い方をしているけれど。

『志賀先輩の好きな人が龍也さんだから』

それが速水くんが生徒会をやめる理由なんだって、いくら私でも、分かった。


きっと速水くんは、かなわないって思ったんだ。

自分じゃ、龍也さんみたいに皆の士気を高められないって、思ったんだ。


たしかに速水くんと龍也さんは、全然似てないから。

タイプが違いすぎるから。


好きな人が自分とはまるで正反対の人を好きだなんて、絶対に自分に振り向いてくれないんじゃないかって思えてきて、つらくなる気持ちは分かる。


でも。

でも、龍也さんとは違っていても、速水くんだって立派に生徒会の一員で。

志賀先輩にとっては大事な後輩なはずで。


私から見たら、速水くんだってちゃんと、志賀先輩にとって大切な存在に違いないと思うのに。

それなのに、龍也さんみたいになれないことが、そんなに悲観的になるべきことなの?

龍也さんみたいになろうとすることが、そんなに大事なこと?


……速水くんだって、言ったよね。

志賀先輩を好きな気持ちは変わらない、って。

諦めたりしない、って。

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