好きになっちゃダメなのに。

「速水くん」

「本気で、陽のことだけが理由じゃない。一応来年は受験生だし、勉強に集中したいっていうのが一番の理由。そもそも、学校行事なんて楽しめるタイプじゃないのに生徒会にいたのが間違いだったんだよ」


私の言葉を遮ってそう言った速水くんは前を見たままで、隣を歩く私を見ようとはしない。

いつもより少しだけ早口な彼の言葉は、どこか投げやりで、まるで自分を納得させるための苦し紛れの言い訳のように聞こえた。


……好きな人に、自分じゃなくてほかに好きな人がいる、なんて。

つらい、よね。

ショックだよね。

失恋って、私が想像しているよりきっと、ずっと痛くて苦しいんだろうな、って思うよ。


でも、こんなの速水くんらしくないよ。

付き合いの浅い私なんかに、らしくない、なんて言われたら、速水くんは怒るかもしれない。

だけど、本気でそう思うの。

だって、諦めないことが男らしい、なんてバカみたいなことを言った私を信じてくれたとき。

私みたいに後先考えないバカじゃない速水くんは、もしかしたらこういうことになるかもしれない、っていうこと、予想できていたはずだよね。

それでも、諦めない、って決めたんだよね。

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