好きになっちゃダメなのに。


────勉強に集中したい、なんて、嘘。

どんなに生徒会が忙しい時期だって、速水くんは入学してから今まで、一度だって成績を落としたことなんかない。

校内には彼の敵なんかいなくて、2年生になってから格段に数が増えた全国模試でだって、私にはきっと一生とれないような順位を毎回とっているの、知ってるんだから。


……学校行事が楽しめない?

それこそ龍也さんと比較して、自分に自信を失ってるの?

龍也さんのことは、私も誕生会で少し話しただけだから、よくは知らないけど。

先輩たちの言葉から、行事で活躍するタイプの人なんだろうなってことは分かった。


たしかに、速水くんが自分で言うとおり、周りのみんなよりも冷静で大人な彼は、学校行事を思い切り楽しめるわけじゃないのかもしれない。


だけど、速水くんだって、そんなことが本当に大事なことかどうかなんて。

私でもわかるようなこと、わからないはず、ないでしょ?



思わず歩くのを止めた私を振り返った速水くんが、ようやく私をまっすぐに見た。


「……速水くんの、いくじなし」

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