好きになっちゃダメなのに。
ぽつり。
呟くように言った私の言葉に、彼はキュッと眉をひそめた。
「速水くんの嘘つき。……志賀先輩のこと、諦めないって言ったじゃん。この前はあんなにカッコつけたこと言っておいて、どうして今更怖気(おじけ)づくの?」
「は……、」
「今の速水くん、私から見ても男らしくないよ。龍也さんがすごい副会長だったから何?それなら速水くんは、それ以上を目指したらいいじゃん!もっとすごい生徒会役員になってやるって頑張ればいいじゃんっ!」
勢いのままに鞄から取り出したのは、さっき作ったチョコチップクッキー。
普段ならタッパーに入れて持ち帰るけど、今日は頑張ってラッピングまでした。
速水くんに元気になってほしくて、『速水くんなら大丈夫だよ』なんて優しい言葉をかけて渡そうと思っていたのに。
……世の中、上手くいかないなぁ。
「これでも食べて、気合い入れ直してきて!」
ずいっ、と速水くんにクッキーの入った袋を押し付けた。
いきなりの私の行動に驚いたように、速水くんは目を瞠って、思わず、といったように袋を受け取る。