好きになっちゃダメなのに。
「生徒会長になって学校を変えてやる、くらいの意気込みがなきゃ、龍也さんに勝てるわけないよ!」
────私たちを撫でていく秋の風。
私はさっきまでそれをとても冷たく感じていたのに、不思議と今はその冷たさを感じなかった。
速水くんの瞳がまっすぐに私を捉えていて、そして私もまっすぐに彼の目を見つめ返す。
視線を交えるのが初めてなわけじゃないのに、どうしてか、初めてそうしたような気持ちになった。
「……」
私たちの間に沈黙が流れて、けれど速水くんは何も言わない。
自分でも驚くくらいの強い口調で速水くんに投げつけた言葉が、私たちの間に少しの余韻を残して、夜の静けさに溶けていった。