好きになっちゃダメなのに。
第3話 優しい人。

♯ 1 気付かなかっただけ


♯1


「晴山さん、いる?」


決して、そこまで大きい声だったわけじゃない。

怒ったような声だったわけでもない。


だけど、教室の外から呼ばれた瞬間、びくっと私の体が跳ねた。


「え、明李のこと呼んでるのって、速水くん?」


昼休み。
お弁当箱の中身も半分以上食べ終わったかな、という頃。

教室の外から聞こえた声に、机を向かい合わせにして私とお弁当を一緒に食べていた羽依ちゃんが反応して、不思議そうな表情でそう言った。

羽依ちゃんの視線は教室のドアに向いていて、その先を見るのがとても怖い。


「やっぱり速水くんだよ。明李、行かなくていいの?」

私のほうに視線を戻して、羽依ちゃんが首を傾げて私を見た。


……速水くん、今までは呼び出すときはメールだったのに。

どうして今日は、直接なの!?


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