好きになっちゃダメなのに。
自分でもよくわからないけど。
今は、速水くんと視線を合わせるのが、なんだかこわいと感じてしまう。
────今、目を合わせてしまったら。
私のなかで、何かが変わってしまいそうな気がして。
……って!
こんなことを思うなんて、私、一体どうしちゃったんだろう。
「ま、俺が優しくないっていうのは自分でも分かってるから、別にいいけど」
私が何も言葉を探せないでいるうちに、速水くんがそう言った。
その声に微かに滲んだ感情に気付いて、思わず合わせられなかったはずの視線を隣に向けた。
「……っ」
速水くんはもう私の方を見てはいなかったから、視線が合うことはなくて。
……もう、速水くんのバカ。
どうせ、龍也さんと比べて自分は優しくないとかなんとか考えてるんでしょ。
私が言った優しさと、速水くんが今へこんでる優しさは、違うのに。
今までの私だったら、やっぱり自分でわかっていながら冷たくしてるんだ、なんて納得したかもしれない。
でも、私はもう知っちゃったんだよ。
……速水くんが、冷たいだけの人じゃないってこと。
もしかしたら、速水くんはむしろ、優しいほうの自分に気付いていないのかもしれないな、ってなんとなく感じた。