好きになっちゃダメなのに。
……つい最近まで、一番心の読めない人だった。
何を考えているのか、全然分からなかったし、分かろうともしていなかった。
でも。
少なくとも今は、速水くんの気持ち、すごく分かるよ。
速水くんが傷付いてるの、分かる。
志賀先輩とたたかうことになるなんて、私だって思っていなかった。
私はその驚きだけだったけど、きっと速水くんにとっては、それだけじゃなくて。
きっと、志賀先輩が自分じゃなくて須谷くんの隣にいることが、ショックだったんだ。
「速水くん!」
私の声はどうやら聞こえていないらしい。
何度呼んでも、速水くんは歩調を緩めてはくれなくて。
「速水く、わあっ!?」
もう一度速水くんを呼んだ私は、さっきまで勢いよく歩を進めていた速水くんが唐突に立ち止まったことに対応できず、彼の背中に思い切りぶつかってしまった。