好きになっちゃダメなのに。
な、なんで急に立ち止まるの!?
速水くんってホントに極端!
志賀先輩のことで頭がいっぱいで、ぼんやりしちゃうのは分かるけど。
ふつう、立ち止まる前に少しくらいスピード緩めるよね!?
「もう、急に立ち止……」
速水くんの背中に思い切り額をぶつけた私は、恨めしげに速水くんを見上げ、文句のひとつでも言ってやろうと口を開いた。
……けど。
「……速水くん?」
見上げて見えた速水くんの表情は、私が想像していたような、傷付いたようなものではなくて。
整った眉をキュッと寄せた、考え込むような厳しい顔。
その表情がなんだか意外で、私は思わず出かけた文句を引っ込めて、もう一度、名前を呼んだ。